吉田鉄郎の建築
先週のことだが、姉が大学の同窓会やなんやかやで東京に出てきた。日曜の夜には京都に帰るということで、帰る日の夕方に少し早い晩飯を丸の内のあたりで一緒に食べることにした。この頃は陽も早く沈むので、5時前にはもうすっかり夕刻の雰囲気だ。夕暮れの丸の内を少しの時間だが眺めまわした。この辺りはここ10年ぐらいで随分変わって、現代的なビルが林立する情景になっている。常日頃、俺は新しい開発を批判しがちなんだけど、丸の内周辺のこの変化は嫌いではない。東京の表玄関としての丸の内は、なかなか良くなってきたと正直思っている。これで東京駅の姿が建築当初の形を復元できれば、世界の他の大都市の表玄関と較べても、けっこう良い線行っているのじゃないかと思う。
昔の逓信省営繕部は今のNTTファシリティーズの源流になる組織で、山田守や岩元禄などの優秀な建築家を擁した名門である。吉田鉄郎もそうした建築家の一人で、東京駅のそばにある東京中央郵便局はその代表作といわれる。
この東京中央郵便局が取り壊されるかもしれないという話がある。建築学会などを中心に、保存の要望が出ているようだ。これについては、「残せるものなら残した方が良い」というのが俺の気持ちだ。どうしても残さねばならない・・・という程ではない。東京生まれの人間でないのでよく分からんのだが、これが無いと丸の内という場所のアイデンティティが損なわれるという・・・そういうことは無いんではないかと感じている。建築や都市に関係が無い人達もだいたいそういう意見なのではないだろうか。
建築の作品としてこれが名建築と言えるのか?・・・についても、正直、評価が難しいと思う。1931年に完成し、かのブルーノ・タウトがモダニズムの傑作と称えた・・というのだが、どうなんだろうね。このブログでは、自分の感覚でしか物を見ないことにしている。誰が何と言おうと、ピンと来ないものはピンと来ない。確かに悪くはないけれど、世界に目を転ずれば、1930年にはコルビジェ設計のサヴォア邸が完成し、1933年にはアルヴァ・アアルト設計のパイミオのサナトリウムがその美しい姿を現している。
この東京中央郵便局と同様のシンプルなグリッドによるファサード表現は、ルイス・サリヴァン設計の百貨店カーソン・ピリー・スコットに見られ、しかもどう見てもこちらの方が完成度が高い。カーソン・ピリー・スコットの完成年は1904年だ。
結局、当時の日本の近代建築のレベルはその程度だったのじゃないか・・・と思うんだ。ブルーノ・タウトが「モダニズムの傑作」と評したというのは、日本を案内してくれた吉田鉄郎に対する多分に社交辞令的なものだったのではないか・・・と疑えば疑える。
だから壊してよいとは思わない。この東京中央郵便局の建物が、丸の内という場所の記憶に重要な位置を占めているのなら、それはやはり保存の道をさぐるべきだとは思っている。
京都にも吉田鉄郎の作品がいくつか残っている。京都中央電話局上京分局は1924年の完成で、東京中央郵便局より古い。こちらは「カーニバル・タイムズ」という名前で、レストランおよび結婚式場として改修利用されている。中には入ったことないが、外を見る限り、鴨川にかかる橋のたもとに堂々とした存在感を示している。これは残したい。
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